ブエナ☆ビスタ☆ホモ☆ソシアル☆クラブ①

ブエナ☆ビスタ☆ホモ☆ソシアル☆クラブ

 

東北に向かっている新幹線の中ではじまりのひとことを書き出している。

(これを「はじまりのひとこと」と書くと松浦弥太郎っぽいし、「冒頭の一文」と書くと沢木耕太郎っぽい。)

 

行き先は八戸。目的は酒と肴。あと「移動」だ。

 今日から夏休み、午前中に「フランシス・ハ」をようやく観た。実をいうと僕はここ2年、徹底して海外の映画・文学・音楽を避けていた。ヌーヴェル・ヴァーグよりもATGのほうがドラスティックに見えたし、はっきり言ってケルアックより「まどか・マギカ」のほうがパンクだった。

 そんななか、まるでジャームッシュへの愛しかないような映画(レヴがハットを被っている点、ジャック・ダニエルを吞んでいる姿はまさしくジョン・ルーリーへのリスペクトでしかない)を観ていると、ベンジー(ちょっとバーナード・サムナーっぽい)がいいセリフを吐いていた。

 「移動が趣味なんだよ」、彼の同居人のレヴがバイクに乗ってどこかへ出かけていこうとするシーンでベンジーはレヴのことをポツリとこう形容する。

 

「移動が趣味」というのは、僕の友達のN氏とよく話すことだ。僕らはおのおの、よく旅行に行く。でも何を見るでもななく、特に会いたい人がいるわけでもない。車を借りて知らない街を走り(そういえば16歳の僕よ、君は23歳でN氏と一緒に車を買うことになる)、なんなら誰も知り合いのいない団地のジャングルジムのてっぺんで一日を過ごし、買い物袋を持つ母と子の営みを眺めたいと思っている(そうでしょう、N氏よ)。

 

「移動が趣味」という話はあとの話にもかかわってくるけれど、ひとまず映画の話に戻る。いい映画は走る。「フォレスト・ガンプ」も「キャッチミーイフユーキャン」も走る(「ミリオンダラー・ベイビー」や「フォックスキャッチャー」は走ってたけどあまりいい映画ではなかった)。

トレインスポッティング」も走る。誰かが「T2」の映画のレビューの冒頭で、「相変わらず彼らは走っていた」と言っていて、その通りだと思った。人は人生という寄る辺のない灯に胸を照らされたとき、走る。「フランシス・ハ」ではたかだか数十ドルを引き出すため、ATMに向かって掛ける。僕だって、友達から遊ぼうと声をかけられれば走って喜びはせ参じる。上司から呼ばれても走る。行きつけの店でバーテンからお使いを頼まれた時も走る。

ではみんなはどんな時に「走る」、のでしょうか。