ブエナ☆ビスタ☆ホモ☆ソシアル☆クラブ②

ブエナビスタホモソシアルクラブ②

田園にシス

 

一番好きな季節は、と聞かれれば夏と答える。最近若者には夏の人気が再び高まっているらしいが、僕は単純に夏が一番過ごしやすいので好きだ。春と秋口は花粉症がひどく、鼻から気管支に紙粘土を流し込んだような苦しさのなか生活させられるから辛い。冬は外で酒が飲めないからいまひとつだ。

めっきり涼しくなった。東北新幹線のグランクラスでバーボンをがぶ飲みしながら八戸を目指したのはもう1ヵ月前のことだ。ソニマニでジャスティスがヤル気のないプレイをかまし、後輩に大盤振る舞いをした挙句ゲロを吐き、昔仲の良かった女の子がヤク中と今付き合っていることを知り、Jアラートが鳴り、ボルボのクーラーは2回壊れた。仕事のほうはすこぶる不調だったが、「仕事は終わる」。手垢にまみれた夏を黄泉に送るための5連休をもらった。アヴァランチーズのアルバムは、この前衣替えの時に「夏物」と書いた段ボールに入れて、押入れの奥に仕舞った。

わりとよく走った8月だったと思う。7月くらいから、友人に「休みをもらったら沖縄に行く」と宣言していたが、断念した。沖縄を断念するのは実は5年目だ。どうしても石垣島に行きたいと思ってからしばらく経った。5年前沖縄が僕の気持ちを駆り立てたのはたけしの「ソナチネ」だった。寺島進と勝村正信がバカみたいなアロハを着て、砂浜で紙相撲ごっこをするシーン。僕は夏が来るたびにあのシーンを、子供のころひどく怒られたいたずらを恥ずかしく思い出すように、頭の中に思い浮かべている。

「僕らが求めているのは成長じゃなくて救済なんだ」、誰かが学生の頃言っていた。僕はこの言葉をしばらく忘れていた。それを青森の道中で思い出した。だからグランクラスで八戸に行き、インターネットカフェで夜を明かすハメになった。青森は面白い所だった。青森市、八戸、津軽、下北とどことなく故郷(クニ)が分かれているようだった。いくら永山則夫が「津軽の14歳は悲しい」といったところで、それは県境すら越えられない。「田園に死す」のように、彼の過去もすべて嘘か美化されていればよかったのだが。(自分の過去を美化しすぎている、白塗りの青年)。

僕たちは運転中の車内の動画を1時間以上も撮った。思えば「イージーライダー」は救済を目指すロードムービーだった。

 モンスター・ムービーをここのところ聞いている。スロウダイヴのギターがやっているドリーム・ポップだ。おそらく、というより間違いなくこのバンド名の由来はカンのアルバム「モンスター・ムービー」からだ。ベーシストのホルガ―・シューカイが先日死んだ。中高の頃、友達とカンの話を時折していたのを思い出す。人生でそれほど愛聴していたわけではなかったが、個人的にはクリス・コーネルよりショックなニュースだった。「ゲット・ダウン」を観てから、カンを聴く機会が増えていたこともある。「ゲット・ダウン」で流れる「Vitamin C」のベースライン、あれほどクールで力強いリフは他にないだろう。

 死ぬんじゃいけない、今日は「トップ・ギア」を観てとっとと寝よう。